小児脳神経外科
診療紹介
当診療科は小児脳神経外科専門施設としては中四国唯一であり、水頭症を中心とした先天性疾患、脳血管障害、脳腫瘍、てんかん等を対象に診療を行っています。手術症例は年間100例弱と少数ではありますが、いずれの治療に関しても一例一例を十分吟味し患児の状態に合わせたテイラーメイドな治療を心がけています。
主要な疾患について
脳腫瘍
…脳腫瘍と一口に言っても手術のみで完治が期待できる良性腫瘍から、放射線や化学療法を必要とする悪性脳腫瘍までさまざまです。当院では悪性脳腫瘍に関しては小児腫瘍科と連携を密にして、末梢血幹細胞移植を併用した大量化学療法を積極的に取り入れています。
二分脊椎
…当院には総合周産期母子医療センターが有り、二分脊椎をはじめとした先天性疾患の胎児診断を積極的に取り入れています。産婦人科との連携のもと先天性疾患に対しては胎児期から両親・家族と充分なインフォームドコンセントをとって、生後のスムーズな治療を心がけています。生後の治療も新生児科、整形外科、リハビリテーション科、泌尿器科(神経因性膀胱専門外来)などとの連携を図って患児のトータルケアを目指しています
水頭症
…従来、水頭症に対しては脳室―腹腔短絡術(シャント手術)が一般的にされてきました。しかし、シャント手術の欠点としてさまざまなトラブル(感染症、チューブの閉塞、成長に伴うチューブの短縮)の可能性があります。また、一旦体内に埋め込んだシャントチューブはよほどのことがない限り除去できない状態が続きます(シャント依存状態)。それに比べて内視鏡下に第3脳室を開窓することによって、より生理的な髄液循環状態を得ることができます。ただし、この方法が成功するには閉塞性の水頭症であること、髄液吸収能力が充分であることなどの条件を満たしている必要があります。
頭蓋縫合早期癒合症
…本疾患は頭蓋骨の縫合が癒合することによって、頭蓋が変形したり、頭蓋内圧の亢進をきたし、脳の成長に悪影響を及ぼす疾患です。従来の頭蓋形成拡張術に加えて、骨延長器を用いた頭蓋拡大術も取り入れています。
てんかん
……てんかんの治療は主に神経内科、精神科で行われるように薬物治療が原則です。しかし、あらゆる種類の抗痙攣剤を試しているにもかかわらず発作がコントロールできないてんかん群がありこれを難治性てんかんとしています。側頭葉てんかんに対する手術効果は非常に優れていて、発作消失率は80%にもなる。その他、当科にて今まで施行した手術はてんかん焦点切除術、脳梁離断術、大脳半球切離術などがある。術後、発作が消失、減少することによって社会生活はもとより発作により障害されていた機能も改善することがわかってきました。このことは年少児であればあるほど顕著で最近は早期手術の必要性が強調されています。
脳性麻痺を中心とした痙縮の外科的治療
…脳性麻痺などの中枢性の麻痺に伴って痙縮が発生します。四肢の拮抗筋と協働筋の双方の緊張が異常に高まるためにこれらの筋群間でバランスが崩れて、姿勢の異常、関節可動域の制限、歩行障害などが生じます。機能障害が比較的限局している場合には末梢神経縮小術、痙縮が肢全体を侵して異常な肢位を呈している場合は機能的脊髄後根切除術あるいは後根進入部遮断術を選択します。また、重度の痙縮に対しては髄腔内バクロフェン持続注入療法(ITB治療)が2002年度から治験が開始されました。当院では治験の段階から本治療法にかかわってきており、現在も継続して治療を行っています。
神経内視鏡を用いた手術風景
スタッフ紹介
谷口秀和 たにぐち ひでかず
小児脳神経外科医長
●脳神経外科全般、脳卒中の外科、小児脳神経外科
日本脳神経外科学会認定脳神経外科専門医/小児神経外科学会認定医/神経内視鏡学会技術認定医/脳血栓回収療法実施医/卒後臨床研修指導医
中川義信 なかがわ よしのぶ
名誉院長(非常勤)
●小児脳神経外科、脳腫瘍、水頭症
夫 敬憲 ぷ きょんほん
小児脳神経外科医師(非常勤)
●小児脳神経外科、てんかん外科、脳腫瘍、水頭症
西山逸子 にしやま いつこ
小児脳神経外科医師(非常勤)
●小児脳神経外科、てんかん
小児神経学会専門医/日本小児科学会認定小児科専門医/てんかん学会専門医