パンフレットのご紹介
小児がんと向き合うご家族の方へ─ (今井剛小児血液・腫瘍内科医長 著書)
小児がんと診断されたとき、多くのご家族は目の前が真っ暗になるような思いを抱かれることでしょう。 そんな混乱や不安のなか、「少しでも治療を理解し、子どもを支える力になりたい」という願いを持つご家族に寄り添う一冊として、このパンフレットは作成されました。
本冊子では、小児がんの基本的な情報から、治療の種類、入院中の生活、退院後の見通し、さらには「子どもへの告知」「看護」「緩和ケア」「晩期合併症」まで、多岐にわたる重要なテーマが、わかりやすく、丁寧に解説されています。
医療従事者でない方にも親しみやすく、病気と向き合うご家族の「こころの支え」となるよう構成されています。
このパンフレットの大きな特徴のひとつが、表紙から裏表紙にかけて描かれる「鳥とさくらんぼ」の命の物語です。 ページの上部には、一羽の鳥がさくらんぼをくちばしにくわえ、雨の日も風の日も、時に迷いながらも運び続ける姿が描かれ、やがて雛にそのさくらんぼを届ける場面に至ります。
そして、ページの下部には、逆方向にめくることで浮かび上がる、もうひとつの物語があります。 それは、運ばれたさくらんぼの種が芽を出し、成長し、やがて花を咲かせ、実を結び、また土へと還り、新たな芽が地面から顔を出す──命のつながりと再生を象徴するストーリーです。
この物語は、懸命に子どもを支え続けるご家族の姿を重ね合わせるように紡がれており、言葉では語りきれない「祈り」や「希望」を静かに伝えてくれます。
さらに巻末には、塗り絵のページも設けられており、入院中の子どもたちに少しでも楽しい時間を届けたいという、やさしい想いが込められています。
パンフレット全体に、「読む人の心に寄り添う工夫」が随所に施されています。 単なる医療情報の伝達を超え、ご家族の不安に寄り添い、共に歩もうとする姿勢が伝わってくる一冊です。
正しい知識を得るために。 そして、ひとりで悩まないために。 このパンフレットが、子どもとご家族の「これから」の歩みに、そっと寄り添ってくれますように。

管理課 庶務係 宮内 良輔