タマネギの収穫体験このページを印刷する - タマネギの収穫体験

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今年の梅雨は記録的な早さで訪れ、屋上庭園で咲き誇るはずのバラも雨しずくで花びらが散ってしまい少し残念に思う今日この頃です。 しかし、そんな中、早めの梅雨の到来をうれしそうに紫陽花の蕾みたちは水浴びを楽しんでおり、もう少しで綺麗に色づいてきそうです。


 

さて、そんな梅雨を迎える前の4月末。重症心身障害児(者)病棟の方と一緒にタマネギの収穫を行いました。 昨秋のサツマイモ収穫に続き第二弾の野菜収穫となりました。

 

  

【収穫までの道のり】 
昨年の11月初旬、約100本のタマネギの苗を植え付けました。 野菜作りに詳しい大原さんという患者さんに教わりながらチャレンジしました。
 


 

下左の写真は3月9日の状態です。なんだかあと2ヶ月程度で収穫の時期なのに成長が芳(かんば)しくないなあー。と思っていた頃、またまた救世主の誕生です。
「この前様子を見に来たけど育ちがちょっと悪いみたいだったけんなぁー。」 退院されたにもかかわらず、屋上庭園のことを気にかけて下さっていた患者さんの大原さんがタマネギ用の肥料を持って助けに来てくれたのです。 なんてありがたいことなんだろう。こんな風に応援して下さる方がいてくれることは本当に励みになります。
少しずつ気温も上がってきたため、マルチをはずし肥料を施(ほどこ)した結果、右の写真が3月末の状態です。タマネギの葉っぱも張りがあり生き生きと育っている印象です。

 

4月中旬を過ぎる頃から葉っぱが倒れだしたタマネギも現(あらわ)れ出しました。葉っぱが倒れてくるのが収穫の合図です。
大きく立派に育ったもの、ピンポン球くらいしかない小さなもの、なんとも不揃いな成長を見せてくれました。まぁ、素人が屋上庭園で育ててるんだから、この成果でも十分だよなぁ―。と、自分を慰めつつ・・・・・。 しかし、自分を慰める必要もないほど患者さん達はタマネギの収穫を楽しんでくれ、笑顔で応えてくれました。
だって、どんな形をしていても、小さくても大きくてもタマネギはタマネギ。ものの形、見た目よりもものの本質が大事。 土の匂い、タマネギのツンと鼻に刺激のある匂い。それを感じながら太陽の下でタマネギを収穫する。 カレーにすると美味しいかなぁー、肉じゃがにすると美味しいかなぁー。なんて想像しながら楽しく収穫する。
そこに大きな意味があるんだよ。そう患者さんが教えてくれているようでした。

 

小さいものもたくさんありますが、なかなかの量を収穫することが出来ました。
今回から病院レストラン棟の「いなほ食堂」さんで食材として買い取っていただけることになりました。そして、その代金によりサツマイモの苗を購入し、秋の収穫に向けて植え付けました。
少しずつですが、屋上庭園にも小さな「アール・テロワール」の世界が生まれだしています。

                          管理課 山口 智恵子

※「アール・テロワール」という考え方
「アール」は芸術「テロワール」はワインの用語で、ワインを育んだ「土地の文化、自然、人」そのワインを大切に育てた物語や背景のことを言います。美味しいワインは単に味、色、香りだけで語られるのではなく、その「テロワール」にも同じように価値があるといわれています。それは当院のアートも同じ。完成した作品の背景にある物語「テロワール」が大切なのです。この屋上庭園は当院のたくさんのアートボランティアさんが関わって下さっています。ご自身が病気だったり、大切な人が病気だったり、病院の職員だったり、その時の経験から、今、病気と向き合う人たちが少しでも前向きな気持ちで治療できるように。という想いを込めて携わってくれています。この庭園は誰かが誰かを想う、思いやりの結晶です。そしてそれはアートを育む土壌「テロワール」があるからこそ生まれること。その土壌の大切さを理解して育んでくれるアートボランティアの方々、収穫体験にも協力的にサポートしてくれる職員の方々、収穫した野菜を購入して下さるいなほ食堂の方々の協力のおかげで生まれるものです。
全ては関わり合うことで循環しているのです。目に見えないその「感謝のエネルギー循環」を小さな経済として「見える化」したもの。それが「アール・テロワール」という考え方です。