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みんなで作るレストラン、みんなで育てる病院このページを印刷する - みんなで作るレストラン、みんなで育てる病院

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 当院のレストランは病院の中にはありません。外にあります。南側の白くて丸い建物です。「外にあるから遠くてお昼休みに食べに行けない」「あんまり美味しくない」「あの建物がレストランだったなんて知らなかった」そんな声をちらほら耳にしながら、「食べ物は元気の源なのに。残念だな。。。。」と感じ続けること6年。昨年、ついに全面的な改善がスタートしました。全員参加型の病院づくりをキーワードに、院内だけでなく地域の皆さんにもご意見やご協力をいただきながら、「食を満たすだけでなく、患者さんや医療スタッフの心も満たせる場所に。地域の人の憩いの場になるように。そして、何よりこの場所にみんなで対話しながら新しいレストランの姿を模索したい。」と、病院の思いを表現しました。

 その熱意に応えてくださったのが、「イナホコーポレーション」さんです。母体は地元の製麺所さんです。社長の宮谷さんは地元善通寺市をこよなく愛していらっしゃる気持ちの熱い方です。11月25日には「いなほ珈琲」としてリニューアルオープンされとても過ごしやすい空間になりました。 お年寄りや赤ちゃん、車椅子の方々、ちょっと息抜きしたい医療職の皆さん、それぞれのプライバシーを尊重し、観葉植物や木材の棚で細かく区切られたスペースは、様々な患者さんやそのご家族のニーズに応えられます。レストランスタッフも皆さん元気で明るく、細やかな配慮に溢れ、とても気持ちの良い空間になっています。メニューも、地元の食材を中心にした手作りを基本にどんどん進化を繰り返しています。 

 病院側も精一杯の応援をしています。まず、レストランの外壁に「MICHIRUBA」という文字を描きました。これは療育指導室の皆さんが入所者さんと共に一字ずつ、心を込めて描いてくれたものです。「MICHIRUBA」という文字に込められた想いは資料でご覧ください。 また、レストラン西側の壁に描かれた美味しそうな食べ物と、左右の羽の大きさが違う黄色い幸せの蝶は、当院入所者、岸原さんの作品です。彼女は常々素晴らしい絵を描かれる方なのですが、今回初めて作家としてご協力いただきました。もちろん、作品に対して著作権やフィーが発生し、彼女は作家としての収入を得ることができます。そして、彼女だけではなく、彼女の周りで共に絵を描いている仲間や、それを支えた医療スタッフにもわずかですが寄付という形でお支払いすることができます。当院が導入している「アール・テロワール」という独自の小さな経済活動についても資料をご覧ください。レストランで販売されているボランティアさんたちの作品についても同じ考え方で、小川のような、お互いがお互いを想い合う小さな経済、循環ができています。

 応援はまだまだ続きます。隣接する養護学校さんと開院以来6年に渡って続けてきた壁画制作「海を渡る蝶」の壁画プロジェクト。今年は養護学校と病院の間の壁ではなく、レストランの壁に描いてもらうことにしました。病院の建物側からレストランにお越しの際は、右前方に見えます。是非ご覧ください。 さらに!レストラン1Fの壁紙は当院の象徴である「全員参加型の壁紙づくり」で応援することにしました。建設の時からクリエイターとして関わってくださり、開院以降はボランティアメンバーでもある井上正憲さんと由季子さんご夫妻にご協力いただき「マイカップ」の切り紙ワークショップを実施しました。強力な院内アートメンバー、共済係山口さん、職員係長尾さん、ME久原さんを中心に650枚のマイカップ作品を収集することができました。ご協力ありがとうございました。この中には隣接する看護学校の先生や生徒さん、授業で関わらせていただいた香川大学の学生さん、宝塚看護大学の学生さんの作品も含まれています。もちろん、院長や看護部長さん、事務部長さんの作品も含まれています。


 
 12年前「アートによる問題解決」をスタートに、病院でのアート活動をさせていただいて、私が今、一番感じることは分野を超えた「対話」の重要性です。患者さんを見る角度が違えば、思うことも違うのです。選択の優先順位も。でもどの視点も患者さんにとっては大切な一部であり、患者さんの全体像を知ろうとするなら、様々な角度からの分野を超えたフラットな対話、患者さんと共に進んで行きたい未来についての理解と、時には調和のための譲歩と、説得や納得が必要なのだと思います。そのどれもが対話なくしては得られないものです。

 横田院長先生はいつも「職員一人ひとりが専門性を高めながら、同時に職種を越えて人として横のつながりを大切にして欲しい。そして職員だけでなく地域の人々にも、当院を自分の病院として好きになって欲しい。」と、おっしゃいます。井原看護部長さんは「常に創意工夫をして改革することを恐れないことが大切よ。」と。上甲事務部長さんは「ピンチはチャンスだ」と、おっしゃいます。今、私たちは辛い局面に立たされていますが、こんな前向きで力強くもあたたかいリーダーの元で働くことができます。辛い時だからこそ希望を失わないで、今の自分にできることに精一杯取り組みたいと思います。一人の力は小さいかもしれません。だけど、同じ目標に向かって対話を重ねること。それぞれが他人事としてではなく、自分自身のこととして病院と、世界と向き合って、今、できることをする。小さくても、難しくても、勇気を持って一歩踏み出してみる。そんな日々が続いて行けば、いつか霧は晴れて、私たちの目前には明るい光が差し込むのだと信じています。
 

                   ホスピタルアート ディレクター  森 合音
 

資料 「MICHIRUBA」・「アール・テロワール」
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