収穫の秋 ~芋掘り体験~
「うんとこしょー、どっこいしょ」
「うんとこしょー、どっこいしょ」
「獲ったどぉーーーーーーーーーーー」
10月の秋晴れの中、6階屋上庭園では賑やかな声と笑顔がたくさん飛び交っていた。
お芋掘り
何の変哲もない、芋掘り。
年配の方には至極当然のように経験があり、今の子供達でも保育園や幼稚園で必ずといってお芋掘りを体験されていると思います。
でも、当院には重症心身障害児(者)病棟がありますが、入所されている方は生まれ持っての障がいをもたれている方も多く長年入院生活を送っています。
中には、生のサツマイモを見たことがない方もいらっしゃるのです。
そういう患者さんにもお芋掘りを体験していただきたい、少しでも楽しい入院生活を送っていただきたいと思い、サツマイモを育てることとしました。
始まりは5月、
「おいも、おいも、さつまいもー。今年は患者さんと芋掘り大会だー」
意気揚々と鳴門金時の芋づるを10本買ってきた私は、もともとは15センチくらいしかない花壇の土をモリモリに盛り上げて畝を作って、野菜作りに詳しい患者さんに教えてもらいながら、芋づるを土に挿しました。
しかし、ここで大問題です。
屋上庭園はすごく日当たりも良く水はけもすごく良いのです。
この日当たりと水はけが良すぎることで、芋づるが発根する前に萎れて枯れてしまいそうになっていたのです。
私は病院の職員ですが、ボランティアで屋上庭園のお世話をしているため、日中、頻繁にお芋の世話をすることは出来ませんし、週末も何度もお芋の様子を見に来るのは困難でした。
私の考えが甘かった・・・・・・。 お芋掘り大会が・・・。泣
しかしそんな時、救世主が現れたのです。
「枯れんように水遣りしてあげるわ。」
そう言ってくれたのが、足のけがで入院されている大原さんという患者さんでした。
大原さんは頻繁に屋上庭園を利用してくださっており、私が、この屋上庭園でサツマイモを育てようとしている理由をお話しすると、「そりゃ芋掘りは楽しいだろう。みんな喜ぶわ。」と賛同してくださったのです。
頻繁にサツマイモのつるの様子をみて、土が乾燥しきってしまわないように水遣りをしてお世話をしてくれました。
その後も花の水遣りを手伝ってくれたり、メダカのお世話をして下さったり、本当にお世話になっています。
おかげで、すくすくと育ち収穫を迎えることが出来ました。
また、大原さんだけでなくサツマイモの成長を見守り応援して下さる患者さんたのおかげでもあります。
こうした、患者さんが医療を受ける立場だけでなく別の患者さんの事を想い、与える立場となり活動して下さる。そんな素敵な循環が屋上庭園には生まれています。
お手伝いしてくれた大原さん
芋掘りは重症心身障害児(者)病棟を対象にコロナウィルスの感染防止のため病棟ごとに日程を分けて行いました。屋上庭園へ出かける事が難しい患者さんは、芋掘りの様子をオンラインでライブ中継し楽しんでもらいました。
予想を超える豊作にみんなで歓喜し収穫の喜びを体験することが出来ました。
言葉で思いを伝える事が難しい患者さんもいますが、満面の笑みが「すごいね。楽しいね。ありがとう。」と話しかけてくれているようでした。
サツマイモのその後
病院の来院者、職員向けのレストラン「いなほ食堂」で提供されるメニューの食材となりました。
いなほ食堂のスタッフさん
← いなほ食堂のスタッフさんが毎週手書きしているお弁当のメニュー表です。
この時はさつまいもの甘煮となり紹介してくれました。
私は、さつまいもの天ぷらのお弁当をいただきましたが、ホクホクでとてもおいしかったです。
■リニューアルされたレストラン棟
当院にあるレストランは、病院関係者のみではなく、地域の方にもお気軽に利用いただけるよう、病院とは別棟となっております。
もっとみなさんにご利用いただけるように、「MICHIRUBA」(充ちる場)と名付け、今年の4月に大幅なリニューアルを実施しました。運営する業者さんも変わり「いなほ食堂」というレストランがオープンしました。
病院レストランは、収益を上げるのが難しいと言われていますが、食の提供だけではなく、人の思いが行き交う場所を連携しながら創って行きたいという当院の思いに賛同してくださり運営に名乗りを上げてくれました。
柔軟に利用者の声や職員の要望を取り入れてくださっており、今回も収穫したサツマイモを食材として利用してもらうということが実現できました。
最後に
今回の収穫体験でたくさんのスタッフから「楽しい収穫体験をさせてもらってありがとう」という言葉をいただきました。私からも「私もみなさんが収穫体験を楽しんでくれて、楽しかったです。ありがとう」という言葉をお返ししました。
屋上庭園の管理をしているとたくさんの「ありがとう」をいただきます。
しかし、屋上庭園がどんどん素晴らしい場となっていっているのは、理解を示し協力してくれるたくさんのスタッフ、そして温かく見守り応援して下さるたくさんの患者さん、地域の方々のおかげです。
この場をおかりして
「いつも本当にありがとうございます。そして、春はタマネギ収穫だよー。」