Gardenから「こんにちは」このページを印刷する - Gardenから「こんにちは」

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 「ボランティア」―皆さんはどういうイメージでしょうか。健常者から障害者へ裕福な人から貧困なものへ、恵まれた人から恵まれない人へ???? そうなんでしょうか。
 ちなみに私は人格者でもなければ裕福な人間でもありません。ただ、健康な身体を持っているという事だけです。そして、一つ大きな事は、以前から事務職員の自分には患者さんのため、職員のため、そしてみんなに愛される病院となるため、何かできる事はないだろうか。そういう思いを抱き続けていたという事です。 
 そんな私の心の中にあった小さな種に、水をかけ芽吹きを与えたくれた人が現れたのです。

はじまり
 「荒れ地と化した屋上庭園をどうにか改善したいから力を貸してほしい。」
5年ほど前、アートディレクター 森合音さんに相談を持ちかけられた事により、私の生活が激変する事となりました。
「私に何ができるのかはわかりませんが、できる限り協力させていただきます。」
そう答えたものの、職員でありながら屋上庭園へ行った事がなかったのでの現状を見に行き愕然としました。容赦ない風、乾燥しきった土壌、茅の葉が風にそよぎ、雑草たちの中でわずかに生き残った多肉植物達が肩身を狭そうにひっそりと生きている状態だったのです。 この庭園に季節色とりどりの彩り、みずみずしい潤いを与えられるようになるのだろうか・・・。 ガーデニング好きのただの素人に何ができるのか??? あの絶望感は今でも忘れません・・・。

                                                                                  

 今年で5年目となり、やっとなんとか庭園らしくなってきました。
 6階の屋上庭園は東側「そよ風ガーデン」、西側の「おひさまガーデン」があります。最初は私一人で夏の照りつける日差し、乾燥、強風と戦いながら、こんな広いガーデンを一人でどうしよう・・・。と泣きそうになりながらひたすら一歩ずつ前に進んでいくという日々でした。そんな時、改善に乗り出した話を聞いた、当時の企画課長が「病院の事をみんなで力を合わせないでどうするんだ!」と事務職員を先導しこの芝生を真夏の暑い中張ってくれました。それ以降、真夏の水やりも事務職員が当番制で手伝ってくれています。
 そして、なにより助けられたのは地元中学生のボランティア部の子供達、そして顧問のY先生です。数年前から、西側の「おひさまガーデン」を手がけてくれる事となりました。
 一日の仕事が終わり、夕方、ガーデンのお世話に行くと作業に来た中学生達が「こんにちはー」と元気な挨拶をしてくれます。 真夏の週末ともなれば、毎週のようにガーデンへと出かけるのですが、顧問のY先生に必ずといっていいほどお遭いします。隣で、同じ志を持った仲間が頑張っているという事は何よりも私にやる気と元気を与えてくれました。

● 4月の西側「おひさまガーデン」の様子
 

●4月の東側「そよかぜガーデン」の様子
 

変化
「何年か前に入院した時は何にもない庭だったのに見違えるようやなあ。」
「明日退院だから、見納めに来たよ」
「リハビリのために毎日歩きに来るけど、花を楽しませてもらって嫌なリハビリも苦にならんわぁ。」 
など、いろんなうれしいお言葉いただいています。
 当初は、ガーデンに訪れる人が珍しいぐらいだったのに、今ではたくさんの患者さんに訪れてもらえるようになりました。患者さんどうしのコミュニティーの場。 ご面会のお友達や家族が来られと一緒にガーデンで談笑されている方を拝見すると、本当にやっててよかったと、つくづく思います。
 また、今年は新型コロナウイルスにより、入院患者さんは面会も制限され、外来患者さんとの接触を避けるため、院内を移動する時間帯にも注意が必要な状況になってしまいました。重心障害者の入院患者さんにとっては唯一の移動できる場所となっており、頻繁にお散歩に訪れてくださっています。
 患者さんの中には生まれてからずっと病院で過ごす方もたくさんいます。そういう方々に病室では体験できない事に触れていただき、少しでも心の安らぎやワクワクいろんな事を感じる事のできるお手伝いがしたいと思っています。   

そして、可能性は無限大。参加、体験するガーデンへ。

ジャガイモ
 2年前、ジャガイモを育てました。
 そして、療育指導室に助けを求めると児童精神科の子供たち、重心の患者さん達と芋掘り大会を行ってくれました。 さらに、栄養管理室の協力をいただき、その芋をマッシュポテトやフライドポテトにしたものをチョコレートファウンテンでおいしくいただき、患者さんのたくさんの笑顔をいただきました。 今年は、鳴門金時の芋づるを植えました。秋に患者さんとお芋掘りを行うのが楽しみでわくわくします。
 

 

メダカ
 今年の春、屋上庭園にメダカさんがデビューしました。去年から計画していたもののなかなか手をつけられていなかったのですが、患者さんに「メダカを飼えば?絶対子供も喜ぶよー」とのお言葉をいただき、急がねばと早速準備しました。 評判もよく、たくさんの患者さんに見ていただき、お世話していただいています。 そらいろ病棟の患者さんに餌やりをお願いしてお世話をしてもらっています。先日は一緒に濁った水の入れ替え、掃除を行いました。
      

掲示板  
 屋上ガーデンへの自動扉の手前に掲示板を設置してもらいました。  
 中学校のボランティア部顧問の先生が「ボランティアだより」を作成してください掲示しています。 その季節のお花の情報やガーデンを育てる中でどういう思いを込めているかや届けたいメッセージを綴ったりしています。 お越しになった際は、是非ご覧下さい。


ホスピタルアートの中のガーデン
 アートの中にはいろんなものがあります。
 その中でも、ガーデンでは「生きているアート」そして「応えてくれるアート」だと思っています。
 私は患者さんや職員、訪れてくれた人の事を思う気持ち、草花へ愛情をたくさん注ぎながらお世話をしています。そうするとこんな過酷な環境の中でも力強く生き、育ち素晴らしい姿となって応えてくれるんです。
 春の芽生え、色とりどりの花、夏の深緑、秋の紅葉、冬に枯れ落ちる葉。 そこには「生」と「死」があり、いろいろな姿となり草花自らの命を以て表現されます。 いろんな姿の庭を観て何を感じるのかは一人一人違うと思います。
  ただ、皆さんの心に「癒し」となって優しい風を届けられていると信じて今日もせっせと庭仕事に励みます。

管理課 山口 智恵子