vol.31 See you someday in Thailand!~国際学会体験記~このページを印刷する - vol.31 See you someday in Thailand!~国際学会体験記~

2020年2月掲載

初期研修医/狩野静香さん

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 始めまして,初期研修医2年目の狩野静香と申します。
 ここ,四国こどもとおとなの医療センターでは, Asian Medical Conference on Child Health (AMCCH)としてアジアを中心とした国際学会が毎年開催され,各国での小児医療について2日間にわたり口頭発表やポスター発表が行われています。また,交流のあるタイ王国立Queen Sirikit National Institute of Child HealthはPediatric Meeting of National Child Healthを毎年主催しており,どちらの学会でも初期研修医から発表することができます。

 さて,皆さんは「国際学会で発表しない?」と言われてどのように思いますか?私の中では一言「やってみたいけど,ハードルが高い…。」でした。初期研修1年目のAMCCHで,学会に参加されていたタイ人医師から“See you next year in Thailand !(6月に行われるタイの学会に来たら良いよ。)”と声をかけられました。やや硬めの笑顔で“I hope so…”と,発表予定の先輩方を遠い存在に感じていたのが実際のところでした。けれども,このことがきっかけとなりました。ハードル高いけどやってみようか,と初期研修2年目に両学会に参加させていただくことになりました。機会は頂いたものの医学英語は大学3年の講義で習ったきり…単語選びから手探りでしたが,学会発表を通して症例を一つの形に仕上げるという経験は非常に大きな糧になったと思います。また発表予定の後期研修医の先輩方と夜な夜な内容をブラッシュアップできたことも忘れられない経験となりました。
 学会には,1年前のあのタイ人医師も参加されていました。今年は同じ問いに“ Yes, of cause !”と笑顔で見送り,その週末に私はタイのバンコク市へ向けて出発しました。



 バンコク市で開催されたPediatric Meeting of National Child Healthにはタイ,フィリピン,カンボジア,シンガポールなど普段ならきっと出会えないような国々の医師, メディカルスタッフがたくさん参加されていました。オープニングには音楽に合わせた体操(徳島の方は想像がつくかもしれません,あの阿波踊り体操の雰囲気です!)が行われるなど,とても和やかな雰囲気でした。私はポスター発表での参加でした。発表中は至近距離から随時質問されるという口頭発表とはまた違う状況で,求められる英語力も違うのだということを身をもって感じました。

 

 学会発表はきっちり,そして懇親会もきっちり盛り上がるのがタイスタイルのようでした。学会後の懇親会会場でも再度オープニングの踊りが登場し,さらには「これならみんな歌って踊れるでしょ」とある方が日本の有名な某アイドルグループのカラオケをオーダー。我々日本勢は勢いのまま壇上に登ったのですが,スマホでYouTubeを覗きながらノリで合わせることに…。実はその方はタイの医療行政では大変有名な方だったことを後で知ることになるのですが,そんなことも全く感じさせないフレンドリーさで誰よりも上手に踊っていたのが彼だったのは言うまでもありません。私もゲストには全力でおもてなししようと,この時に決意することとなりました。
 期間中にはホスピタルツアーも企画され,Queen Sirikit National Institute of Child Healthの救急外来から一般病棟,NICU,PICUを含めて各部門のスタッフに案内していただきながらタイでの医療の現状を伺うことが出来ました。併設されているマクドナルドハウスも見学することが出来ました。マクドナルドハウスとは企業基金で設立された患者家族のための宿泊施設です。施設職員のお話では,医療を受けるために地方からほぼ引っ越しのような状態で看病をされる患者家族も多いのだそうでした。今回の学会でも地方へ医療をどのように届けるかに焦点が当てられており,その必要性について非常に納得したのを覚えています。その地で日々働いている人々や訪れる患者さん,家族を目の当たりにすると,ここで医療が行われている,そんな当たり前の言葉も行く前とは全く違うリアリティを持ち始めました。出発する前はタイへ行くのは学会発表経験の一つと単に考えていました。その想像はいい意味で想像を裏切られ,情報があふれる日常の中で頭でっかちになりがちな私に,改めて自分の目で見ること,体験することの面白さを思い出させてくれたような気がしました。



 ちょっと無理かな…なんて思えても,一年後には実現することもあるみたいです。来年以降もこのようなリアリティを,ワクワクを共有できる後輩が増えてくれたらと願うばかりです。“See you someday in Thailand !”

 出発までにはたくさんの先生方にご指導いただき,職員の方々に手続きのサポートを頂きました。この場をお借りしまして厚く御礼申し上げます。また,この原稿を依頼頂いてから季節が二つ移ってしまうほどの遅筆ぶりを発揮してしまいました。そんな遅筆ぶりを根気強く待っていただいた皆様に深謝いたします。

〈2020.2〉