〈こども〉 vol.12 成長痛ってどんな痛み?このページを印刷する - 〈こども〉 vol.12 成長痛ってどんな痛み?

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Q 成長痛というのはどんな痛みですか? 
A 以下のような特徴を持つ痛みです。
  •夕方から夜間に下肢(膝周囲が多い)の疼痛を訴える。
  •痛みの程度は様々で泣くほど痛がることもある。
  •さすってやったり抱っこしたりしていると痛みは改善して、
    翌朝にはまったく痛みは訴えない。
  •痛みは不定期に繰り返しおこる。
  •3歳から小学低学年の小児によくみられる。
  •保育所や幼稚園、学校などでの生活には支障はない。   

Q 成長痛は病名ですか?
A 成長痛という用語は一般の生活でもよく用いられている呼称です。ウェブサイトで成長痛をキーワードとして検索すると、典型的な幼少児の下肢痛の意味で使用しているサイトは45%にすぎず、骨端症(膝のオスグッド病や踵のシーバー病など)やスポーツ障害による痛みに対して「成長痛」という呼称を用いているウェブサイトが35%にみられます。  

    図1 ウェブサイトにおける「成長痛」という言葉の使われ方

 このように成長期にある小児の四肢の痛みという意味で、病態の異なる種々の疾患に対して成長痛という呼称が広く使用されているという現状があります。 

 実際の骨の成長に伴って痛みが発生することは医学的にありませんので、成長痛という病名を用いることは不適切であるとする意見も多くあります。しかし、成長痛に代わる適切な名称がないため、「いわゆる成長痛」などとして使用されています。今後、病名としては「下肢痛」などのように症候名を使用するのが適切ではないかと思われます。 

Q 原因はなんでしょうか? 
A 医学的に成長痛という用語が初めて用いられたのは1823年フランスの論文においてです。当初はリウマチ性疾患と関連する疼痛と考えられていましたが、1930年代にリウマチ性疾患との関連は否定的とされ、以後は器質的疾患の明らかでない疼痛と考えられるようになりました。
 1950~1970年代にかけては家族背景や心因との関連を示唆する報告がなされるようになりました。
 その後様々の要因の関与が検討されてきましたが、いまだに痛みのはっきりとした原因は分かってはいません。

Q どの年齢や部位に多いですか? 
A 年齢は2~14歳にみられ、好発年齢は3~5歳の幼児です。疼痛部位は膝から足部に多く、疼痛発生時刻は夕方から夜半にかけて多いのが特徴です。
 また有病率は2.6%から49.4%と報告されています。最近のオーストラリアでの調査では4~6歳児の37%で認められたと報告されており、極めて頻度の高い症状といえます。  

   図2 成長痛の発生時刻と疼痛部位

Q 病院ではどのように診断がなされますか? 
A 夕方から夜間に突然下肢を痛がる、といって来院した場合に本症を疑います。泣くほどの疼痛を訴える児もいますが、疼痛の強さは診断上の意義は少ないです。痛みの持続時間が問題です。数時間以内の一過性のものであることを確認することが大切です。
 また病院での診察時には、患児に疼痛の訴えがないことを確認します。来院時にも疼痛を訴える場合には、成長痛以外の原因を考えなければなりません。

Q 診察ではどのような異常がありますか? 
A 通常、腫脹や圧痛、関節の運動制限などの異常は認めません。
腫脹や運動制限がある場合には、外傷など他の原因を考えます  

Q 何か検査は行いますか? 
A 単純X線検査(レントゲン撮影)は行います。両大腿正面像、両下腿正面像を撮像して下肢全体の異常を検討します。成長痛では異常な所見は見られません。
 血液検査の必要はありません。

Q 診断基準はありますか? 
A 一般的に用いられる診断基準はありません。  当院では、簡便な基準として1.疼痛は8時間以内2.来院時には無症状、3.診察上異常所見なし、4.単純X線検査で異常なしの4項目を満たす場合に成長痛と診断しています。

Q 治療法はありますか?
A 痛みに対する特別な治療方法はありません。 
 疼痛時には、疼痛部位をさすったり、外用剤を貼付するなどの処置で様子をみてよいと思われます。消炎鎮痛剤の内服あるいは坐薬使用の必要はありません。
 1回10分×1日2回の下肢筋のストレッチ運動が疼痛の軽減に有効との報告もありますが、理学療法や運動療法の適応はあまりありません。

Q 将来何か問題が起こることはないでしょうか?
A 後遺障害についての報告はありません。小学生以降では痛みの頻度は自然に少なくなっていきます。