file.11 臨床工学技士(ME)
Medical Engineer(以下ME)
医療機器管理センター / 白川憲之
○はじめに
「臨床工学技士」と聞いて何をしている人なのかご存知の方は少ないでしょう。たぶん「レントゲンの人?」や「心電図やエコーの人?」といった放射線技師や臨床検査技師などのコメディカルスタッフと間違われる人も多いのではないでしょうか。「臨床工学技士」も同じコメディカルスタッフであり病院内にある医療機器の保守点検や操作を行っています。すなわち、病院には不可欠な医療機器のスペシャリストなのです。
○臨床工学技士とは
臨床工学技士の制度が出来たのは比較的新しく、1987年に制定されました。医学的な知識と工学的な知識を併せ持った国家資格の1つです。近年医学の発展とともに医療機器も発展を遂げ、より複雑な操作と保守管理を要するようになってきました。それに対応し医療機器の操作と保守管理を行うのが臨床工学技士の仕事です。
○当院の臨床工学技士業務
【人工心肺業務】
心臓手術は心臓を止めて行ったり心臓を拍動させながら行ったりします。心臓を止めると全身と肺に血液が流れなくなってしまいますので我々が人工心肺装置を用いて心臓と肺の代わりに循環と肺機能を代行します。また心臓の動きを止め心臓を保護するために使用する心筋保護装置の操作も行います。
【補助循環業務】
心筋梗塞や狭心症、心不全などにより心臓の働きが弱まってしまった場合に心臓の補助として用いる装置にPCPSやIABPがあります。これらの補助循環装置を使用する場合は緊急を要することが多く、私たちMEの迅速な対応によって命の救命に貢献しています。
【血液浄化業務】
腎不全や肝不全、敗血症、薬物中毒、免疫疾患などの病気は血液中に有害な物質が溜まっています。血液中の有害な物質を取り除くために持続的腎代替療法(CRRT)やエンドトキシンやビリルビン吸着、血漿交換などの血液浄化療法を行っています。また、慢性維持透析患者に対しても血液透析を施行しています。
【不整脈デバイス業務】
当院では脈が遅くなる除脈に対してはペースメーカー(PM)、突然死を招いてしまう心室頻拍(VT)や心室細動(VF)などの致死性不整脈に対しては埋め込み型除細動器(ICD)、心機能の落ちた心臓に対して行う両室ペーシング(CRT)などの植え込み及びフォローアップを行っている。また、心臓の不整脈を記録するループレコーダー(LR)も対応しています。
【手術室業務】
全身麻酔の際に使用する麻酔器の始業点検や保守。手術中の出血を回収洗浄し患者に戻せるように処理する自己血回収装置の操作や神経機能検査装置を操作してMEPやSEP、ABR、NIMなどを行い術中に神経を傷つけないようにモニタリングをしています。また、ナビゲーション装置にMRIやCT画像を取り込み術中の患部へ正確なアプローチができるようにナビゲーションの操作を行い手術の補助をしています。
【心血管カテーテル業務】
当院のカテーテル業務には心臓や下肢動脈、腹部大動脈の検査並びに治療に携わっています。検査や治療中のバイタルの記録やカテーテル室にあるIVUSやOCT、FFR/iFRの操作を行っています。また、不整脈の検査として行うEPSや不整脈の治療のABLではスティムレーターとポリグラフを操作して不整脈の誘発や測定を行っています。
【ME機器管理業務】
輸液ポンプやシリンジポンプ、人工呼吸器、生体情報モニター、超音波・ジェットネブライザーなど2000台を超えるME機器を中央貸出返却体制にて管理しています。ME室から貸し出しされた機器は使用が終わると返却され清掃と簡易点検を行い再度貸し出しができる状態にして管理しています。また院内で管理している全ての機器を含めると3300台程度になり、年1~2回の定期点検実施し安全に使用できるようにしています。
<2018.01>